2003/7/10 代打日記

「…此処が自子殿の邸宅だな。」
「何だか…研究所の様な雰囲気ですね。」
「研究所か…言い得て妙だな。」
「取り敢えず、自子様を御呼びする事と致しましょう。」

ピンポーン
ピンポーン

「…出て来られないな。」
「おかしいですね。今日はいらっしゃられる筈ですが。」
「聞こえてないのかも知れぬ。もう一度鳴らしてみよう。」
「あ、はい。分かりました。」

ピンポーン
ピンポーン

――シュイン
「…Cynical様、ドアが随分と近未来的な空き方をしましたが。」
「自子殿の邸宅なら、その様に開いてもおかしくあるまい。」
「そんなものなのでしょうか…あ、誰かいらっしゃられますよ?」
「よし、あの方に自子殿の在宅を確認しよう。」

カタカタ…
「御客様デスネ…ハイ。御用デショウカ。」

「………。」
「………。」
「おい、シュウ。」
「何でしょう、Cynical様。」
「これは露骨にロボットだと思うのだが。」
「ええ、ロボットですね。非常にステロタイプな。」

「御用件ハ何デショウカ。」

「シュウ…本当にこのロボットで大丈夫なのか?」
「僕に聞かれても…でも、判断は出来るのではないですか?」
「テクノロジーの進歩を信じない訳ではないが…。」
「確かにベタな外見のロボットですしねぇ。」

「言イタイ放題デスカ、失礼ナ。」

「ベタな割には、頭が良い様だな。」
「ですね。」

「私ハ自子様ニ造ラレタノデス。良イニ決マッテイマス。」

「まあ、話が通じるなら問題あるまい。」
「ええ、本題に移りましょう。」
「悪いが、自子殿は何処に居られるか教えてくれまいか。」

「自子様ハ只今、回路ヲ作成サレテイマス。」

「では、奥に居られるのだな。」
「夢中でチャイムに気付かないとは、自子様らしいですね。」
「さて、そうと分かれば自子殿の所に行くとしよう。」

ヒュッ…ガチン!

「Cynical様!危ないっ!」
「これは…随分と剣呑なロボットだな。」

「来訪目的ヲ告ゲラレナイ方ハ、オ通シスル事ハ出来マセン。」

「…さて、どうしたものか。」
「旧式の様ですし、破壊するのはどうでしょうか…。」
「相手は自子殿が造られたロボットだぞ?」
「…何が仕掛けられているか、分かりませんね。」

「Warning!Warning!
 90秒以内ニ目的ヲ告ゲラレナイ場合、不法侵入者ト見ナシ排除シマス。」

「…Cynical様。」
「ダメだ。来訪目的は絶対に漏らしてはならない。」
「ですが…!」
「…盟約は絶対だと言っているだろう。」
「では…。」
「シュウ、お前だけ先に行け。」
「それでは…Cynical様は。」
「我々は自子殿の元に行くと言う盟約がある。」
「『盟約を果たすまでは、何人たりとも我々を止める事は出来ない』ですか。」
「そう言う事だ。私も必ず後を追う。」
「…分かりました。」

「90秒経過。不法侵入者二名ヲ確認。排除ヲ開始シマス。」

バシュシュシュシュ!!

「ミサイル兵器か!シュウ、右から回り込め!」
「それではCynical様が!」
「構わん!行け!」
「Cynical様…御無事で!」

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「あ、シュウさん。もう来てたんだ。」
「自子様…入り口に居たロボットは…。」
「アレはガーディアンだよ。最近は物騒だし。」
「あのロボットの方が物騒では…。」

ズズズ…

「何か揺れてるな。何だ?」
「実は…Cynical様が交戦中でして。」
「ええっ!?何でアレとCynicalさんが戦ってんの?」
「訪問理由を告げなかったので…。」
「あ…俺が『他の誰にも言わないでくれ』って言ったからだ!」
「…Cynical様は、妙な所で杓子定規ですから。」
「早く止めないと!Cynicalさん、本当に死にかねない!」
「僕も一緒に行きます!」

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――カランカラン
「中枢…部大破…活動…チュウ…ダ…ン。」

「何とか…やったか。」
「Cynical様!」「Cynicalさん!」
「…シュウに自子殿。遅くなって済まない。」
「御怪我は大丈夫ですか!?」
「死なない程度には大丈夫だ…。」
「…Cynicalさん、約束の物は?」
「…勿論、ザックに入っている。」

「…そっか。じゃあ、早くそれで飯作って貰おうかな。
 俺、腹減っちゃって。パスタも伝授して貰うんだし。
 あ、先に行って用意してるから。二人共遅れるなよ?」

タタタ…

「………。」
「………。」
「…倒れている場合では無さそうだな。」
「でも…Cynical様は怪我をされているんですよ!」
「何処の世界に、空腹の人間を放っておく料理人が居る。」
「それはそうですが…。」
「自子殿も、向こうで用意をして待っている。さあ行くぞ。」
「…自子様はあまり戦闘の後遺症を考えてない様で。」
「回路製作が終わったのと同時に、空腹ならばあの様になるだろう。」
「…そんなものなのでしょうか。」
「まあ、自子殿の性格もあると思うが。」
「Cynical様が大丈夫だと判断したのかも知れませんしね。」
「いや、あれは多分…天然だろう。」
「…げに恐ろしきは、天然と空腹と言う事ですか。」