崖

私の周囲は、断崖絶壁の崖。
足元は、僅かに残っている頼りない足場だけ。

下に落ちれば、決して助かる事は無い。
考えてる間にも、足元の足場は崩れてどんどん小さくなっていく。

どうして、こんな状態になったのだろう。
思い起こしてみれば…あぁ、私の自業自得だ。

…最初は、簡単な事だった。
ただ、貴方といつも通りの他愛無い喧嘩をしただけ。

長い長い、貴方との時間の中で。
私は、自分の事も貴方の事も振り返らなくなっていた。

我侭を許してくれるのも。
いつも微笑んで、私の頭を撫でてくれるのも。

いつしか、それが当然だと思っていた。
私は、その幸せに慣れきってしまっていた。

…いつも通りの喧嘩。
それはただ、私の中でいつも通りだっただけで。

喧嘩にいつも通りなんて無くて。
貴方の中では、緩やかに変わっていたみたい。

そうして、貴方が居なくなったから。
私の我侭と貴方の愛情で固められてた足場は崩れて。

こうして、私は崖の上に立っている。
それも、もう長くは無いだろうけど。

…でも、諦めないで待ってみようかな。
最後まで、貴方が来てくれる事を期待してもいいでしょ?

もし、来てくれるなら…来る時は歩いてきてね。
…久しぶりに貴方と手を繋いでみたいから。