鬼 神

…私の中には鬼が居る。
悪鬼羅刹の様な鬼が。

いつから棲みついたかは、自分でも憶えてない。
気付けば、私の中にソレは確かに存在していた。

時々、堪らなくこの現在を壊したくなる。
キミも私もこの曖昧な関係も、何もかも全て。

私は…キミの望む事なら何でもする。
私に出来る事でも。私に出来ない事であっても。

キミが「悲しい」と言えば、私の全てで慰めて。
キミが「寂しい」と言えば、キミの傍で愛を注ぎ。
キミが「疲れた」と言えば、聖母の様に安らぎを与え。
キミが「嬉しい」と言えば、自分の事みたいに喜ぶ。

それでも、キミは振り向いてくれない。
だから、私の鬼が目を覚ます。

ヒステリックに喚き散らして。
我侭を言って、キミを困らせる。

困ってるキミを見て、喜んでいる鬼が居る。
構ってくれるキミを見て、嬉しがる私が居る。

この時だけが、キミが私を見てくれる時間。
それを分かっているから、私の中の鬼はいつまでも居なくならない。

…早く気付いて。私が一番、キミを愛してると言う事を。
…早く気付いて。キミには、私が必要だと言う事を。

キミは、私の事を我侭と揶揄するけど。
私の我侭の全ての元凶はキミなんだよ。

キミが愛してくれるなら、鬼は神にもなれるんだから。