マッチ

煙草を吸わない私の部屋。
その私の部屋に、何故かマッチがある。

しかも、それは一つじゃなくて。
もう両手に溢れるくらい。

コレは、君の忘れ物。
いつも冷静な、君の人間らしい部分。

皆、普段の君からはイメージできないだろうな。
私の部屋に来る度に、忘れ物をしていくなんて。

私の部屋に上がる度に、美味しそうに紫煙を燻らす君。
そこには、必ず君愛用のマッチがあって。

「煙草は、マッチで火を点けた方が旨いんだ。」
そう得意げに微笑む君が、私だけの君。

君の火を点ける前の癖。
それは、マッチの箱を三回振る事。

その行為が、煙草を吸えない私には格好良く見えて。
私もやってみたくて、マッチの箱を振ってみた。

「煙草を吸わない癖に、変な奴。」って、君は言うけど。
私はいいんだ、これで。

君がマッチを振る音。
それが、私の頭の中で一番のイイ音になったんだから。

だから、私もマッチを振るんだ。
君の一番好きな音が、私がマッチを振る音になる様に。