刹那

私が貴方に目を奪われたのは。
一体、いつだっただろう。

貴方のその髪をかき上げる仕草。
いつもの煙草を気だるげに銜える唇。

屈託の無い笑顔で笑う貴方が好きで。
次第に惹かれていく自分を止める事は出来なかった。

貴方はいつも、私を見ていて。
私の安息できる所を作ってくれた。

私にとって、貴方は癒しの手で。
貴方と居る時間は、儚い幻の様だった。

でも、貴方と私の感覚は違っていたみたい。
それは別れを切り出した貴方の口から、思い知らされた。

「僕らは、長く一緒に居すぎた。」
そう言った貴方には、飽きるほどの長さだったかも知れない。

でも、私には。
貴方と過ごした時間は、刹那にしか感じられなかったから。